A. C. and Mamie Forehand(A. C.&マミー・フォアハンド)

(出典:Rate Your Music

盲目の夫婦による心の叫びが迫るカントリー・ゴスペル

◯ACフォアハンドとマミー・フォアハンドの夫婦によるゴスペルユニット
◯二人ともに盲目
◯ブルースハープとフィンガーシンバルを使い独特の世界観を演出

 

I’m So Glad Today, Today(1927年)」ACフォアハンドの名前でクレジットされている曲。静かめのカントリー・ブルースのギターに掠れたようなカッコいいACフォアハンドの歌が絡む。さらにマミー・フォアハンドのフィンガーシンバルが絶妙なリズムを鳴らす。

Mother’s Prayer(1927年)」フォークっぽいカントリー・ブルースの曲。もちろん歌詞の内容はゴスペルではあるが、彼らの曲の中では最もスタンダードなブルースっぽい曲。ACのエンディングのブルースハープソロがいい感じである。

Honey in the Rock(1927年)」なんて曲だろう。これはヤバい・・・というのが初聴した時のインパクトである。「チーン、チーン」というマミー・フォアハンドのフィンガーシンバルのお経のような音と泣いて震えているようなヴォーカル。なんなんだろうか、これは。曲のキーは暗くないのだが、とにかく何とも言えない不気味な曲である。

Wouldn’t Mind Dying If Dying Was All(1927年)」こちらもマミー・フォアハンドのクレジットで彼女のヴォーカル曲。一説には、Honey in the Rockとこの曲でヴォーカルが違う人物ではないかという研究があるが、そのへんは定かではない。しかし相変わらずのフィンガーシンバルは健在で、老婆みたいな不気味なヴォーカルがなんとも言えない。さらに言うと、Honey in the Rockもそうだが、ACのスライド・ギターがより一層不気味さを引き立たせている。

 

記録として残っているのがここに紹介した4曲しかない(バージョン違いはある)というA. C.&マミー・フォアハンド夫婦。ゴスペルではあるのだが、エヴァンジェリストというよりはカントリー・ゴスペルと言われる。メンフィスでは大道芸人として街角でよく演奏していたらしい。また、残念ながら本人たちの映像や画像も残されてはいないようだ。

ACは10代で、マミーは生まれつきの盲目であったようだが、本当にこの頃のミュージシャンは盲目の人が多い。1930年頃、30代でマミーは亡くなった。ACは数年後にピアニストと再婚するのだが、なんとその彼女も盲目であった。

そこへさらに人種差別も当然あったのであろうが、そのような境遇の下であったからこそ、神にすがるしかなく、彼らのような凄まじい曲が生まれるのかもしれない。平和ボケしている僕たち日本人には到底わかりえない境地なのであろう。

このユニットで特筆すべきは、やはりマミーのフィンガーシンバルだと思う。こういった一定のリズムの鐘の音は万国共通で宗教的な意味合いを想像する。神を崇める儀式や、生ける者・死んだ者に関わらず鎮魂する儀式のようなプリミティブな繋がりを感じてしまう。

たった4曲ではなく、もっとたくさんの曲を聴きたかった。

 

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