(出典:americanbluesscene)
- 1 ”シカゴ・ブルースのパイオニア”/ビッグ・ビル・ブルーンジー(Big Bill Broonzy)
- 2 曲紹介
- 2.1 代表曲ランキング
- 2.1.1 15位:Willie Mae(1953年)
- 2.1.2 14位:I Can’t Be Satisfied(1930年)
- 2.1.3 13位:Back Water Blues(1945年)
- 2.1.4 12位:This Train(1956年)
- 2.1.5 11位:When Did You Leave Heaven(1956年)
- 2.1.6 10位:Big Bill Blues(1927年)
- 2.1.7 9位:Just A Dream(1939年)
- 2.1.8 8位:Long Tall Mama(1932年)
- 2.1.9 7位:Get Back [Black, Brown and White] (1951年)
- 2.1.10 6位:Saturday Night Rub(1930)
- 2.1.11 5位:Glory of Love(1957年)
- 2.1.12 4位:I Get the Blues When It Rains(1965年)
- 2.1.13 3位:Shuffle Rag(1959年)
- 2.1.14 2位:Key to The Highway(1941年)
- 2.1.15 1位:Hey Hey(1952年)
- 2.2 その他の曲
- 2.1 代表曲ランキング
”シカゴ・ブルースのパイオニア”/ビッグ・ビル・ブルーンジー(Big Bill Broonzy)
1893年にミシシッピで生まれたビッグ・ビル・ブルーンジー(以下ビッグ・ビル)。ブルースはもちろん、その幅広い音楽性と類まれなギター・テクニックでたくさんのミュージシャンたちを魅了した。
かのマディ・ウォーターズもリスペクトした、シカゴ・ブルース界の基盤を作ったと言われる大物である。
最初に持った楽器はフィドルだったビッグ・ビル。青年の頃はアーカンソーでカントリーソングなんかもやっていたようだ。
1920年代に入るとたびたびシカゴへ出向き、そこで出会ったパパ・チャーリー・ジャクソンにギターを教わるようになる。
するとその多才ぶりを発揮して、カントリー・ブルースだけではなく、ラグタイムやジャズからゴスペルやフォークの要素まで次から次へと取り入れるようになる。
彼の曲を聴いてもらうとわかるように、1920年代の初期の演奏から晩年の1950年代に渡って、本当にいろんなタイプの曲をやっているのがわかる。まあ、単純ではないから飽きがこない。
また、アコースティックなブルースからエレクトリックなものまで器用に扱っていたそのギターの腕前もかなり高く洒落っ気もあって、多くの若手ミュージシャンたちに影響を与えたようだ。
よく言われるのが、コテコテのブルースマンというよりは、少し都会的で洗練されたシティ・ブルースマンといったところだ。
そんな感じで気がつけば大都会シカゴのブルース界においてそのスタイルを作り上げる第一人者となっていた。
しかし、あまり音楽による収入は多くなく、ずっとポーターや保安員などの労働を続けながらの活動であったらしい。
”From Spirituals to Swing”
転機となったのは1938年と1939年のジョン・ハモンドの主催による”From Spirituals to Swing”だった。
From Spirituals to Swingは、ニューヨークのカーネギー・ホールで名プロデューサーのジョン・ハモンドが指揮をとったアフリカ系アメリカ人の音楽の歴史を披露した伝説のコンサートである。
まさしくそのタイトルのように、スピリチュアル(黒人霊歌)からスウィング(ジャズ)までビッグネームが出演して、今となってはそのメンツの凄さに圧倒される。
この中でビッグ・ビルはブギウギ・ピアノの雄アルバート・アンモンズとセッションしている。曲は「Done Got Wise」と「Louise,Louise」の2曲。
この伝説のコンサートに参加したことで、一気にビッグ・ビルの知名度は上がり、シカゴ・ブルースの父として、またシティ・ブルースの大御所として名を馳せるようになった。
その後1950年代に入ると、マディ・ウォーターズなどシカゴでエレクトリック・ブルースのムーブメントを勃発させた後輩たちとは違うフォーク寄りの方向へ進んだ。
そしてフォークミュージシャンと教育機関によってシカゴに建てられた《The Old Town School of Folk Music》の創設にも関わるようになって、いわゆる”フォーク・リヴァイバル”にも関わり、フォーク界においても重要な人物となっていった。
そんな感じでビッグ・ビルは、たくさんのジャンルやミュージシャンとのセッションも多く、ジャズ界やフォーク界隈においても有名になった。
この頃は精力的にヨーロッパのツアーも行い、世界的にも知られていくようになる。
1955年には自叙伝「Big Bill’s Blues」なる本も書いたが、2年後に喉頭がんを発症して、1958年に息を引き取った。
1980年には殿堂入りを果たした。
曲紹介
生涯に300曲ほどの録音を残したビッグ・ビルの曲は先ほど書いたようにいろんなジャンルに富んでいておもしろい。しかもギターは相当うまく、聴き応えのある曲も多いし、シャレたものもある。
そんな中からランキングを選ぶのもなかなか大変である。っていうか全曲聴くのすら正直無理・・・。
そうなると、有名どころやカバーされているような曲がやっぱり占めてくるようになった。
さらにビッグ・ビルはその曲も歌ももちろん良いのだけど、やっぱり個人的にもギターが一つポイントとも思う。歯切れのいいベースラインのピッキングの間に独特のメロディやフレーズを放り込むセンスの良さ、思わず「カッコいい。」と唸ってしまうようなそんな曲はやはり人気も高いようだ。
代表曲ランキング
15位:Willie Mae(1953年)
まずはオランダのアムステルダムにて1953年のライブ録音。これは典型的な※モノトニックベースのリフで刻まれる疾走感のあるブルースだ。単音弾きや※チョーキングが多いが、全体的に軽快なギターに乗せてビッグ・ビルの歌がノッてくる。カッコいいギターの一曲だ。
※(モノトニック・ベース:ベースの低音を一定のリズムで刻みながら、同時に高音のフレーズを弾くテクニック)
※(チョーキング:弦を押さえたまま上下方向に引き上げて弾くテクニック)
動画は曲が終わってから少しビッグ・ビルのMCが入っているが、曲自体は3分ほどで終わっている。
重要度 | 3.0 |
知名度 | 3.0 |
ルーツ度 | 3.0 |
好み | 3.5 |
総合 | 3.0 |
14位:I Can’t Be Satisfied(1930年)
ビッグ・ビル・ブルンジーにしては少し珍しいが、カントリーっぽい陽気な感じの曲である。ギターはフィンガーではなく※フラット・ピッキングスタイルでカーター・ファミリーのようなベースラインを強調した弾き方をしている。
※(フラット・ピッキングスタイル:いわゆる普通のピックで弾くスタイル)
結構パキパキとした音になっているが、この頃のアコースティック・ギターを当時のピックを使って、録音技術のことなんかも考えると仕方ないところなのだろう。
しかしこれはギターは1本?なんか2本にも聞こえるし、、、やっぱりイントロやソロは2本!?うーん申し訳ないがハッキリしないなあ。まあそれだけ上手いということには違いないけど。
重要度 | 3.0 |
知名度 | 3.0 |
ルーツ度 | 3.0 |
好み | 3.5 |
総合 | 3.0 |
13位:Back Water Blues(1945年)
言わずとしれたベッシー・スミスが作ったミシシッピ大洪水についての曲。この動画は珍しいもので、1945年にイタリアのアメリカ軍のコンサートの模様らしい。少し音量レベルが小さめだが、とても貴重な映像なので上げることにした。
曲は元歌もコテコテのブルースなので、ビッグ・ビルもそう変わらないアレンジにしている。まあこの洪水は当時のアメリカ南部にとっては大惨事だったので、住んでいた人たちにとっては一生忘れられない出来事だし、この曲も心の奥深くにまで染み付いた鎮魂歌なのだと思う。
だから激しくしたり、あまりアレンジを変えずに原曲に忠実にやっているのかもしれない。
重要度 | 3.0 |
知名度 | 4.5 |
ルーツ度 | 3.0 |
好み | 2.5 |
総合 | 3.0 |
12位:This Train(1956年)
元々は宗教ソングとしてゴスペル・ミュージシャンたちが歌っていた曲で、シスター・ロゼッタ・サープがエレクトリックで世俗的なバージョンにしてリリースした。
ジャンルを問わずいろんなミュージシャンがカヴァーしており、有名なスタンダード曲でもある。このビッグ・ビルのバージョンはずっと同じリフと歌の繰り返しで単調ではあるが、ロックンロールっぽいリズムで弾いているギターが曲全体のノリを良くしているのが特徴だ。一回聞くと耳から離れない。
重要度 | 3.0 |
知名度 | 3.5 |
ルーツ度 | 3.5 |
好み | 3.0 |
総合 | 3.0 |
11位:When Did You Leave Heaven(1956年)
これも貴重な映像だ。どこかのジャズクラブかなんかで暗闇の中で一人バラードを弾き語るビッグ・ビル・ブルーンジー。
タバコの煙を燻らせながら、その曲に合わせて踊るカップル。実にムーディーな絵だ。
原曲は1936年にリリースされた映画音楽だが、曲自体がいいのでこれもたくさんカヴァーされている。もちろんビッグ・ビルの弾き語りバージョンは珍しいが、こういう感じもなんなくこなす器用さはさすがである。
重要度 | 3.5 |
知名度 | 3.0 |
ルーツ度 | 3.0 |
好み | 3.5 |
総合 | 3.0 |
10位:Big Bill Blues(1927年)
ビッグ・ビル・ブルーンジーの代名詞のようなタイトル・チューン。1950年代にはこのタイトルでアルバムも出しており、ピアノが入ってジャズっぽいアレンジにしているが、このバージョンは最も早い1927年のもので、ビッグ・ビルのギターとヴォーカルのみで、ベーシックなカントリー・ブルースとなっている。
他のビッグ・ビルを知っているから余計にそう思うぐらいにシンプルなブルースだが、デルタ寄りのカントリー・ブルースが好きな人だと気に入るだろう。
イントロから入る♪タララタララタララタララ〜♪って3連符のギターフレーズは後のモダン・ブルースやシカゴブルースでよく出てくる王道リフの先駆けのような感じがするから、結構この曲重要かも?しれない。
重要度 | 4.0 |
知名度 | 3.5 |
ルーツ度 | 3.5 |
好み | 3.0 |
総合 | 3.5 |
9位:Just A Dream(1939年)
どちらかというと、これとは別にビッグ・ビル・ブルーンジーがギターで弾き語りをしているバージョンの方が人気があるようだが、ここでは1939年リリースの古いバンド・バージョンを上げてみた。
なぜこの古いバージョンにしたかと言うと、これはピアノなどが入っているが、モロにシカゴブルースのスタイルだからである。マディ・ウォーターズらが作ったエレクトリックなものに比べると少しアナログ感は否めないが、その10年も前にこんなモダンブルースをやっていたところにやはりビッグ・ビルがシカゴブルースの先駆者というのを実感できるからだ。
単純にビッグ・ビルの歌声やギターを聴くだけなら他にいい曲がいっぱいあるので、この曲ではその歴史的な意味を噛みしめたい。
重要度 | 4.0 |
知名度 | 3.0 |
ルーツ度 | 4.0 |
好み | 3.0 |
総合 | 3.5 |
8位:Long Tall Mama(1932年)
ビッグ・ビルらしいラグタイム調の弾き語り。これなんかもギターは結構難しいのだけれども、いとも簡単に歌いながら弾いているのはやはり凄い。
このビッグ・ビル・ブルーンジーやブラインド・ブレイクなどのラグタイムのギターを得意としているブルースマンの弾き語りを聴いていると、最近のミュージシャンでこういうの出来る人っていったいどれくらいいるのだろう?ってふと思うのである。
おそらく現役のミュージシャンでも、そもそも知らない人も多いんじゃないかと思うし、僕自身がそうだったようにルーツミュージシャンの”上手さ”に気づいていない人もまだまだいるんじゃないだろうか?
本当に意外だけど、最近こういうのやっている人が少ないからわからないけど、やっぱりルーツミュージックは楽器演奏にとってもネタの宝庫に違いない。
しかしビッグ・ビルのギターは聴いていてもおもしろいし、フレーズも気持ちが良い。
重要度 | 3.0 |
知名度 | 3.5 |
ルーツ度 | 3.5 |
好み | 3.5 |
総合 | 3.5 |
7位:Get Back [Black, Brown and White] (1951年)
この曲はビッグ・ビル・ブルーンジー自身が晩年にフォークやプロテストソング(政治的抗議の意味を込めた曲)へ傾倒する前兆とも言えるだろう。
曲自体はビッグ・ビルが1945年に書いたものだが、その内容に問題があったためにどこのレコード会社もリリースしなかったようだ。問題と言っても、今や当たり前のように言われている人種差別に対して抗議したものだが、当時のアメリカはまだまだ白人至上主義で、それを皮肉ったようなものはなかなか世に出すのは難しかったみたいである。
まだ公民権運動が起きていない時に「白、茶、黒」で段階的に差別があるといったことを歌っていて、アメリカではダメで、先にヨーロッパでリリースされた。時代が人種差別の撤廃へ動き出した頃で、この曲はとても重要な意味合いを持っていたと思われる。
この曲ではギターはただの伴奏みたいになっていて、ロックンロール(R&R)に近い。フォークなんかもそうであるが、歌に重点を置く場合はそういうスタイルでやっていたのかもしれない。歌で主張したい場合は楽器が前に出ると邪魔になってしまうからなのかもしれない。
重要度 | 4.0 |
知名度 | 4.0 |
ルーツ度 | 3.0 |
好み | 3.5 |
総合 | 3.5 |
6位:Saturday Night Rub(1930)
「この兄ちゃんギター上手すぎる!」と思わず口に出てしまいそうなくらいに凄いギターである。
ラグタイム調で始まるギターだが、本当にこの曲もギター1本で弾いているんだろうか?もしそうなら、もはや変態的な領域である。
ベースラインのフレーズもカッコいいが、メロディが完全に独立したチョーキングなどを入れた高音のフレーズはそのリズム感が本当に凄い。なぜなら、ネット上でもたくさんのギタリストがこの曲を弾いてアップしているが、どこか全体のリズム感がぎこちないようなものが多いので、それくらい難しいのである。
ただ、一つ疑問点があって、それはこのビッグ・ビルのバージョンの回転数である。1930年頃の録音なので、もしかしたら”ハヤマワシ”といういわゆる回転数が早く録られている可能性が高い。つまり、聴いているほど実際の曲は速くなく、もう少しゆったりしているかもしれないのだ。
もちろん速いほどより変態的に上手く聴こえるので、この可能性は否めないし、実際戦前ブルースにはそういうものが多いらしい。
詳しくは『戦前ブルース音源研究所』という素晴らしいサイトで色々と検証されているのでぜひ読んでみて欲しい。彼らは本当にプロフェッショナルで追究しているので、とても勉強になるし、その執念とも言うべき探究心は尊敬に値する。僕も学ばせてもらっている。
※しかし残念だが、2021年9月でその素晴らしいサイトを閉じられるようである・・・。
⇒ 『戦前ブルース音源研究所』
重要度 | 3.5 |
知名度 | 3.5 |
ルーツ度 | 3.0 |
好み | 3.5 |
総合 | 3.5 |
5位:Glory of Love(1957年)
ティン・パン・アレーのソングライターであるビリー・ヒルが作ったスタンダードな曲で、ベニー・グッドマンやオーティス・レディングもカヴァーしている。
このビッグ・ビル・ブルーンジーのバージョンは2003年公開のジョージ・クルーニー主演映画『Intolerable Cruelty(耐え難い残酷さ)』のサントラにも入れられた。
晩年の亡くなる直前のレコーディングではあるが、この頃はかなりフォークソングに傾倒していたこともあり、メジャーなポップチューンをブルースでもジャズでも無い、なんとも不思議なビッグ・ビルっぽい演奏でまとめている。
もはやこの領域は他のブルース・ギタリストでは真似できないところまできている。なんともクールだけど、温かみのある弾き語りだ。個人的にも好きな曲。
重要度 | 3.0 |
知名度 | 3.5 |
ルーツ度 | 3.5 |
好み | 4.0 |
総合 | 3.5 |
4位:I Get the Blues When It Rains(1965年)
この曲は1928年に書かれたポップなスタンダード曲であるが、これまたビッグ・ビルがらしく調理している。たくさんのミュージシャンがカヴァーしていて、インク・スポッツのヴァーションが有名かな?
しかしコレ系は彼しかこんなアコースティックでジャジーなブルースを弾けないんじゃないかと思ってしまう。相変わらずの上手すぎるギターに上手いヴォーカルが乗っかる弾き語りスタイルの曲。これは1965年にリリースされたようなので、ビッグ・ビルの死後に出されたテイクだと思う。
それにしても音がクリアでハッキリしていて、歌にもリヴァーブがかかっていて、旧き良き時代のアメリカを感じさせるクールな音使いになっていてとてもカッコいい。
重要度 | 3.0 |
知名度 | 3.0 |
ルーツ度 | 3.5 |
好み | 4.0 |
総合 | 3.5 |
3位:Shuffle Rag(1959年)
これはビッグ・ビルが亡くなる寸前頃に、ブルースハープ&ギターのコンビで有名なSonny Terry(ソニー・テリー)& Brownie McGhee(ブラウニー・マギー)と一緒にやったセッションを 、Folkways Recordsからリリースしたアルバムに入れていた曲である。
アルバムの他の曲では一緒にセッションをしていて、これまた素晴らしい出来で、みんな本当に楽しそうにやっているのがアリアリと伝わってくる名盤となっている。
アルバムの7曲目に入っているこの「Shuffle Rag」に関してはビッグ・ビルがラグタイム調のギターをインストで披露しているが、これまたギターが最高なのである。めちゃくちゃビッグ・ビル節炸裂のギターで、僕もこの記事を書いている今コピーにチャレンジしている。
いや、こんなギターをさらっと弾けたらカッコいいなと思ってやってみたけど実に難しい(汗)。ま、そんなに甘くはないか・・。
重要度 | 3.5 |
知名度 | 3.0 |
ルーツ度 | 3.5 |
好み | 4.0 |
総合 | 3.5 |
2位:Key to The Highway(1941年)
彼の最も有名な曲といえばこれだろう。ただ、この曲に関しては誰が作曲したのか?ライセンスにおいてハッキリしていないところがある。そのくらい謎めいた曲でもある。
この曲が世界的に有名になったのはあのエリック・クラプトン率いるデレク&ザ・ドミノスが名盤『Layla(レイラ)』の中でセッションカヴァーをしたからだけど、それまでもブルース界では重要な曲としてカヴァーも多いスタンダードだ。
最初のレコーディングはブルース・ピアニストのチャールズ・シーガーでその後にハーピストのジャズ・ギラム、そのギラムに乗っかるような形でビッグ・ビルがギターで参加している。
しかしその後結局、世の中的にはビッグ・ビルの8小節バージョンがスタンダードなアレンジとなったので、みんなそれを基準にカヴァーしていったようだ。
動画はブルース・ハープのジャズ・ギラムとウォッシュボードにウォッシュボード・サムが参加した名演のバージョンであるが、ブルース史上においても重要な曲の一つであることは間違いない。
重要度 | 4.5 |
知名度 | 4.0 |
ルーツ度 | 3.5 |
好み | 3.5 |
総合 | 4.0 |
1位:Hey Hey(1952年)
ビッグ・ビル・ブルーンジーの中でも最も有名なうちの1曲である。ご存知の方も多いと思うが、これもエリック・クラプトンが1992年にリリースした名盤『アンプラグド』でカヴァーして有名になった曲だ。
クラプトンのバージョンもほぼビッグ・ビルの原曲に忠実なアレンジで、わかりやすいブルースをやっている。
本家のリリースが1952年なので戦前ブルースではないが、アコースティックな楽器編成でシンプルに録られたこの曲は、隙がないくらいにカッコいい。まあクラプトンの影響もあって、たくさんのギタリストがコピーしているようだが、このギターリフは典型的なビッグ・ビルっぽさが出ていて、モノトニック・ベースの教科書みたいな完成度だ。僕も最初に練習した曲の一つだ。
一度聞くと覚えてしまうこのリフは、リズム感があって聴いていても思わず口ずさんでしまうような、まさしく名曲であると思う。
ちなみにこちらの動画⬇はビッグ・ビル本人が弾いている貴重な映像だ。
重要度 | 4.0 |
知名度 | 4.5 |
ルーツ度 | 3.5 |
好み | 4.5 |
総合 | 4.0 |
ブルースに詳しい人たちや玄人系のミュージシャンなんかの間でも、「好きなブルースミュージシャンは誰?」という質問を受けると、ビッグ・ビル・ブルーンジーが出てくることはほとんどないらしい。
なぜだろうか?
それは、今までこの記事でも感想を述べているように、ビッグ・ビルはブルース以外のジャンルにも結構手を出していて、ラグタイムやジャズ寄りのどちらかというと都会的で洒落た音が多いのが要因らしいとのことだ。
まあ、確かにその意見や気持ちもわからないではないけど、僕みたいにギターを弾く人間からすると、そんなこと関係なしに好きだし、実際めちゃくちゃ上手いので単純にリスペクトしてしまう。
ブルースはもちろん好きだけど、あまりにもそこに精神的な部分やアイデンティティみたいなものを求めすぎると、ちょっと僕にはしんどいかなと思う。だって、そうなるとゴスペルと世俗的なブルースも切り離さなくてはならなくなるし、そもそもラグタイムやジャズにしてもアフリカ系アメリカ人の音楽なワケだから、このサイトのようにルーツミュージックという大きな括りで話が出来なくなってしまう。
例えばコテコテのデルタ・ブルースしか認めないというのであれば、それ専門でやっていけばいいことだし、少なくとも僕はそういう見方はしていない。
だからやっぱりビッグ・ビルは数あるカントリー・ブルースのミュージシャンの中において、その功績も影響力も楽曲もテクニックも全てにおいてハイレベルだし、素晴らしいブルースマンの一人だと思う。
その他の曲
・「Where The Blues Began」
・「Mean Old World」
・「Whiskey And Good Time Blues」
・「John Henry」
・「Baby Please Don’t Go」
・「Trouble In Mind」
・「Goin’ Down The Road Feelin’ Bad」