Chris Bouchillon(クリス・ブシロン)

(出典:Discogs

トーキング・ブルースの創始者

◯1893年 サウスカロライナ州オコニー郡生まれ
◯”Talking Blues(トーキング・ブルース)”を最初に作ったと言われている。
◯兄弟で『ブシロン・トリオ(後にグリーンビル・トリオ)』を結成

 

喋るブルース?ラップ?

”The Talking Comedian of The South”とも呼ばれたクリス・ブシロンであるが、そのメロディの無い弾き語りのスタイルは、後のフォーク界にとって革命的であった。一部では”ラップの元祖”であるというようなレジェンド的な扱いも受けているが、そこは意見が分かれるところで、あくまでもフォーク・ブルースとしての喋り語りであって、アフリカ系アメリカ人の独特の感性から生み出されたラップとは一線を画すという主張も強い。

ただ、リズム的には韻を踏んでいたり、南部の田舎のヴォードヴィルやミンストレル・ショーで培われたユーモアのあるスタイルでやっていたため、おそらくアフリカ系アメリカ人の影響を受けているという意見もある。

まあとにかく、”トーキング・ブルース”という一つのジャンルをクリス・ブシロンが作ったというのは事実で、クリスの影響を受けたミュージシャンが主にフォーク系のミュージシャンだったことから、大きくは『フォーク・ブルース』というカテゴリに入れるのが丁度良いかなと個人的には思うのでジャンルはフォークにした。

 

 

THE BOUCHILLON TRIO(ブシロン・トリオ)〜THE GREENVILLE TRIO(グリーンビル・トリオ)

クリス・ブシロンには兄弟がいて、チャーリー(フィドル)とウリス(ギター)とトリオのグループを作って最初にレコーディングした。始めはブシロン・トリオという名で、後にグリーンビル・トリオに変名する。

残念ながらこのトリオの音源を入手することが出来ないので出来栄えはわからない。

 

 

曲紹介

クリス・ブシロンの残っている音源はあまり多くなく、紹介できる数も有名なものも含めて少なめだ。でもウディ・ガスリーやボブ・ディランといった偉人たちに影響を与えているのに紹介しないワケにはいかない。

そもそもトーキング・ブルースというのは歌わずに喋っていて、そのスタイルが後のプロテスト・ソングやフォーク系などにも影響を与えている。

ただ、英語を聞き取れない僕のような日本人の場合、何を言っているのかわからないので正直あまり面白いとは思えない。やたら笑っているような曲も多いのだが、内容がわからないだけに何も面白くないのだ(苦笑)。

良し悪しは別として、日本人が海外の音楽を好きになる理由としては、その”音感”である。ポピュラー・ソングには歌があり、歌詞があるのがもちろん大半だ。ただ、英語が理解できなければあまり歌詞には意味合いがないというのも事実である。今は翻訳できるツールがあるので、なんとなくの理解は出来るが、曲を聴きながらの完全一致というのはなかなか難しい。

それを踏まえると、こういった話口調の歌は音楽として捉えると好みが分かれてしまうのは致し方ないとも思う。しかしこのサイトでは、ルーツミュージックとしての影響力も伝えていきたいので、僕の好き嫌いの問題はあるとしても紹介はしていくべきだと考えている。

クリス・ブシロンも歌詞の内容についてはむしろ深く面白いものも多いし、歌メロのある曲もあるし。

それにラップミュージックにしても歌メロなどは無くとも、韻を踏んだりリズムに関して言うとカッコいいし、あくまでも表現スタイルの違いだけなのであって、そういう自然発生的に生み出された音楽はやっぱり素晴らしい。

 

Talking Blues (1926年)

クリス・ブシロンといえばこの曲である。一番の代表ソングで歴史的な作品である。喋り口調なので、歌詞もメチャクチャ多い。多くの黒人ブルースマンなどを発掘していたフランク・ウォーカーによるプロデュースだが、これぞ”トーキング・ブルース”である。

ずっと続く同じギターの伴奏の上に少しリズミカルな(ラップ調の)歌が乗っかってくる。でもよく考えてみると、カントリー+ラップのような少しミスマッチした融合がすでにこの時に出来ていたのは凄いことだと思う。

今回このクリスの曲の歌をよく見ると、ボブ・ディランが文学的な歌詞を書いているその原型に近いということがわかった。あのノーベル文学賞を取ったボブ・ディランに少なくとも影響を与えているということは実は歴史的にも大変なことなのではないかと驚いてしまった。

重要度 4.5
知名度 4.0
ルーツ度 4.5
好み 2.5
総合 4.0

 

 

Hannah(1926年)

これはさっきの「Talking Blues」のB面の曲。いきなりではあるが、この曲ではクリスがちゃんとメロ有りで歌っている。実はこのAB面のシングルカットは南部で9万枚以上を売り上げるほどの大ヒットとなった。フィドルが入っているのでおそらくチャーリー・ブシロンであろう。

曲の途中で止まって、ドアをノックしたり会話調でやっているのも、ミンストレル・ショーあたりの寄席をマネているのだろう。少劇仕立ての曲に仕上げている。

重要度 3.0
知名度 3.0
ルーツ度 3.0
好み 2.5
総合 3.0

 

 

Born In Hard Luck(1927年)

ギターのストロークが早めで難しそうな曲だが代表的な1曲だ。ヴォーカルはトーキングブルースのスタイルでずっと話している。ギターに合っているのかどうか正直わからない、なんとも不思議な曲だ。エンディングだけ急にワルツっぽくなって歌になっている。こんな締め方もなかなか面白い。しかしクリス・ブシロンもかなりギターが上手いし声もいい。

重要度 2.5
知名度 2.5
ルーツ度 3.0
好み 2.5
総合 2.5

 

 

Waltz Me Around Again Willie(1927年)

クリス・ブシロンには珍しいワルツのスタンダード曲である。こういう普通のヒルビリーもやっているので取り上げてみた。エンディングでは自身による重ね録りのコーラスだと思うが、ハーモニーがあってとても?クリスの演奏とは思えないような仕上がりになっている。個人的には好きな感じの曲。

重要度 2.0
知名度 3.0
ルーツ度 3.0
好み 3.5
総合 3.0

 

 

その他の曲

・New Talking Blues(1928年)
「Talking Blues」のニューバージョン。基本的に変わりはなく、ギターの音がキレイになっているぐらいか・・・。

Old Blind Heck(1928年)
少しもの悲しさもあるフォークソング。この曲ではずっと歌っていって途中でトークが入るが、このように歌とトークを組み合わせているパターンの曲も結構多い。

I’ve Been Married Three Times(1928年)
これも弾き語りではあるが、ギターはなかなか難しそうなフレーズを弾いている。喋りながらでもこのようなギターが弾けるのはさすがである。

 


ひと言

クリス・ブシロンが”トーキング・ブルース”というスタイルで後のフォーク・ミュージシャンたちを中心に与えた影響はとても大きいことがわかった。

とりわけボブ・ディランに至っては、ノーベル文学賞を取ったその詩的な部分において、少なからずこのトーキング・ブルースが関わっている部分もあると思う。

そう考えると、クリス・ブシロンが”ラップ”ではなく”トーキング・ブルース”というものを生み出した功績はかなり大きいものとも捉えられるのである。

 

 

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