The Dixie Hummingbirds(ディキシー・ハミングバーズ)

”ゴスペルの王者” ディキシー・ハミングバーズ(The Dixie Hummingbirds)

ゴスペル・カルテットグループとして、いやゴスペル・ミュージシャンとして最も長くこの世に君臨し、活動を続けているスーパーグループである。

1928年にサウスカロライナ州で結成され、今もなお活動を続けているので今年でなんと93周年となる。もちろんその間にメンバーの入れ代わりや、諸々の問題もあったハズだが、それでもずっと続けているだけでも凄すぎる話である。まさに”ゴスペルの王者”というべきであろう。

アカペラから始まり、カルテットグループを作り上げていき、楽器との融合をしながらステージングにも凝った「ハードゴスペルカルテット」というスタイルを確立した。そこから後のソウル・ミュージックに及ぼした影響はかなり大きい。

出典:CREATIVE LOAFING CHARLOTTE

ディキシー・ハミングバーズの結成から現在までとその功績

(1928年〜)
ジェームズ・B・デイビスが弱冠12歳ながら、「ステアリング・ハイスクール・カルテット」というアカペラグループをバーニー・パークスとともに作る。
その後グループメンバーはプロのミュージシャンになるために学校を辞める。その時にグループ名も「ディキシー・ハミングバーズ」へ改名した。

(1930年〜1937年)
南部の教会を数百と周り、精力的に演奏ツアーを行う。その間、グループはデイビスの鬼のような規律によって守られていたらしい。(遅刻、服装、ステージングに至るまで)

(1938年)
最強のリードシンガー、アイラ・タッカーが加入(この時まだ13歳)。それから70年間、死ぬまでハミングバーズで代表的なメンバーとなった。そのパフォーマンスは派手でエネルギッシュで、存在感は凄かったようだ。

(1939年〜1944年)
1942年にペンシルバニア州フィラデルフィアへ引越し、グループ活動の拠点とした。フィラデルフィアのラジオ局に定期的に出るようになり、人気がどんどん上がっていった。。そして、この時期からアメリカは第二次世界大戦に突入という複雑なタイミングを迎える。

(1945年〜1950年)
終戦後、アメリカにとって良き時代が到来する。同時にゴスペル界にとっても追い風となり、ブームが起き、絶頂期を迎える。ハミングバーズもその勢いに乗った。
この頃のメンバーは、ジェームス・B・デイビス(テナー)、アイラ・タッカー(リード)、ビーチー・トンプソン(バリトン)、ウィリアム・ボボ(ベース)、ハワード・キャロル(ギター)という強力な布陣。
1946年にアポロレコードと契約した。

(1951年〜)
テキサスで、ドン・ロビーというレコードレーベル(ピーコック)の創業者に会い、ドラムやエレキギターなどを取り入れるようになった。そしてビルボードチャートにも上がるようになっていった。

(1973年)ポール・サイモンの3rdソロアルバムのバックコーラスとして参加した「Loves Me Like a Rock」がバカ売れし、ハミングバーズもそれに乗っかって後に自分たちのバージョンでリリース。

 

 

曲紹介

90年間も活動しているグループなんて普通はいないのだが、ディキシー・ハミングバーズに関しては当てはまらない。したがって、それだけ曲数が多いのも当然ではある。だから代表曲を全て紹介するのは大変だ。

このサイトは基本的にルーツ・ミュージックを追求しているので、そういった意味でもここでは1970年代ぐらいまでに絞り込もうと思う。

もちろん1980年代以降でも彼らは素晴らしい曲やパフォーマンスを提供してくれているのだが、そこはご理解いただきたい。

 

代表曲ランキング

12位:「Little Wooden Church(1939年)」

デッカ・レコード時代のアカペラ。1939年のレコーディングのようだが、この頃はまだ全体的に大人しいというか、テクニック的にも特に難しいことはやっていない感じである。トーマス・A ・ドーシーの曲で、その後もたくさんのミュージシャンがカバーしているゴスペルのスタンダード曲。

重要度 3.5
知名度 3.0
ルーツ度 3.5
好み 2.5
総合 3.0

 

 

11位:「I’m leaning on the Lord(1939年)」

こちらも先程の「Little Wooden Church」と同じく1939年録音。アカペラってやっぱりリズム感がないとなかなかピタッと合わないのだろう。特にベースに近い音を出す人は本当に凄いと思う。この曲でもテンポが変わったりブレイクするところなんかはメンバーの息が合っていないとすぐにズレてしまいそうで、本当に難しそうだ。

重要度 3.5
知名度 2.5
ルーツ度 3.5
好み 2.5
総合 3.0

 

 

10位:「Poor Pilgrim Of Sorrow(1956年)」

アカペラ+ギターというシンプルな音で、バックのハワード・キャロルのギターがいい味を出している。少しクラシカルなニュアンスもあって、暗めの音から入るが、途中で変調して明るくなったりと、全体の曲調を左右するぐらいに味のあるギターを弾いている。ぜひ聴いてみてもらいたい。

重要度 3.0
知名度 3.0
ルーツ度 3.0
好み 3.5
総合 3.0

 

 

9位:「Nobody Knows The Trouble I’ve Seen」

これはハミングバーズの中でも、というよりゴスペル界にとっての代表曲である。彼らのバーションはマイナーキーのもの悲しげな感じで、タイトルが「誰も知らない私の悩み」とは、なんともヘヴィーなイメージである。しかし他のミュージシャンは明るめの曲調が多い。

歌詞の内容を紐解くと、「自分には誰にも言えないような悩みや辛さがあるけれども、主イエス様は全てわかってくれていらっしゃる。」という前向きな内容で、原曲は黒人霊歌で多くのミュージシャンが演奏している定番曲。

重要度 4.0
知名度 4.0
ルーツ度 3.0
好み 2.5
総合 3.5

 

 

8位:「One Day(1951年)」

これはハミングバーズと女性グループの「アンジェリック・ゴスペルシンガーズ」によるコラボ曲。アンジェリック・ゴスペルシンガーズはフィラデルフィアでの結成なので、当時活動していたハミングバーズと合流することはごく自然な流れだったのだろう。

冒頭からの両グループ入り混じった怒涛のコーラスワークが続くので最後まで圧倒されっぱなしのとてもパワフルな曲である。特にエンディングの両リードヴォーカルによる掛け合いは圧巻だ。

重要度 3.5
知名度 3.5
ルーツ度 3.0
好み 3.5
総合 3.5

 

 

7位:「Christian Automobile(1957年)」

7位はこの曲。これも有名な彼らの代表曲である。ライ・クーダーも彼らをリスペクトしていてカバーした曲だ。こんなタイトル日本人ではまず思い浮かばない。動画は2008年に亡くなったアイラ・タッカーを偲んだ編集版になっていて興味深い。

重要度 3.5
知名度 3.5
ルーツ度 3.5
好み 3.5
総合 3.5

 

 

6位:「Trouble In My Way(1952年)」

年代としては、このあたりからバックに楽器が加わるようになって、音が一層厚みを増している。アップテンポの曲だが、ドラムが入るだけで曲に疾走感が出て、ノリも良くなっている。こういう感じは、後のR&Bやソウルがかなり影響を受けているのがわかって面白い。しかしアイラ・タッカーの歌声は素晴らしいな。

重要度 3.5
知名度 3.0
ルーツ度 4.0
好み 3.5
総合 3.5

 

 

5位:「I’ll Keep On Living after Die(1953年)」

もうひとつアイラ・タッカーの絶妙なヴォーカルが聴ける一曲。ほぼタッカーの独壇場で、シャウトから図太い低音までソウルフルに歌い上げているスロー・ナンバー。当時のゴスペルグループのリード・シンガーとしてサム・クックと双璧と言われていたのも、これを聴けば納得である。

重要度 3.5
知名度 3.5
ルーツ度 3.5
好み 3.5
総合 3.5

 

 

4位:「Loves Me Like a Rock(1973年)」

実はディキシー・ハミングバーズの曲の中でこれが最も有名かもしれない。少なくとも売れたのはこの曲だろう。

1973年にポール・サイモンが出した3枚目のソロ・アルバム『There Goes Rhymin ‘Simon』の2曲目のシングルがこの曲で、バックコーラスにハミングバーズが参加した。でそれがヒット。

程なくして、ハミングバーズもゴスペルバージョンとしてシングルカットしたら、これも売れたのである。
そして1974年にグラミー賞で”ベスト・ソウル・ゴスペル・パフォーマンス”を受賞。結果として彼らの最も有名な代表曲となった。

また、このときのアルバム『We Love You Like A Rock』ではスティーヴィー・ワンダーとも共演している。

重要度 4.0
知名度 4.5
ルーツ度 2.5
好み 3.5
総合 3.5

 

 

3位:「The Final Edition(1959年)」

代表的なアルバム「A Christian Testimonial」の一曲目。ゴスペルの超重要レーベル:ピーコックからのリリースで、ドラムやギターが前面に出るような音作りに変わってきた。

完全にこの頃からバンド・サウンドになっていてとても洗練された音になっている。時代の流行りなどの影響もあるだろうけど、かなりR&Rやロカビリーに近い音でカッコいい。ツイストが似合いそうだ。

追伸:とても貴重なことに、このYou Tube動画のコメント欄にハワード・キャロル本人が書き込んでいる!

重要度 4.0
知名度 3.5
ルーツ度 3.5
好み 4.0
総合 3.5

 

 

2位:「In The Morning(1962年)」

1962年発売アルバムのタイトルチューン。今回もアイラ・タッカー節全開だ。この曲も彼の作曲だが、もう歌のパワーが凄い。シャウトが・・・。こういうのを聴くとウィルソン・ピケットなんかはもちろんジェームス・ブラウンも影響を受けているんだろうな。最後までパワー全開だ!

重要度 4.0
知名度 3.5
ルーツ度 4.0
好み 4.0
総合 4.0

 

 

1位:「Are You Ready(1959年)」

この曲はアルバム『A Christian Testimonial』からめっちゃノリがいいので1位とした。アカペラとソウルフルなリードヴォーカルに、跳ねたドラムとリックが素晴らしいギター。体が自然と動いてしまう。やはりこの頃の彼らは絶頂期だったのかもしれない。『A Christian Testimonial』は本当に最高な出来だと思うし、個人的にこの曲が一番好きだ。

しかし3位の「The Final Edition」もこの曲もアイラ・タッカーが作ったようで、ソングライティングも相当才能があったことが伺える。

重要度 4.0
知名度 3.5
ルーツ度 3.5
好み 4.5
総合 4.0

 

 


90年以上も活動しているグループなのだから、当然時代も変わっていくのだから音楽においてもいろいろ変化していくものだ。そしてディキシー・ハミングバーズももちろん例外ではない。

初期の頃はほとんどアカペラスタイルの歌だけのものが多い。しかし、メンバーが代わり、使う楽器が増えていくと新たなエネルギーが入って、ビートを全面に打ち出したR&Bやロカビリーのようなアプローチの曲もある。

そんなバックの楽器に相乗するかのようなアイラ・タッカーのパワフルなリード・ヴォーカルがこれまたたまらなくいい。シンガーが変わるだけでこんなにも違うものかとビックリさせられた。

『ゴスペル』というジャンルに対して、当初はもっと宗教的なニュアンスが強いものかと想像していたが、彼らの音を聴くと軽快で楽しさも感じる。音楽をどう捉えるかということは人によって違うが、シリアスである反面やっぱり気持ち良さや楽しさといったこともないととても味気ないものになってしまうような気がする。

 

 

その他の曲

・「Thank You For One More Day」

・「Bedside of A Neighbor」

・「If Anybody Ask You」

・「You Don’t Have Nothing」

・「Will The Lord Be With Me」

「Father Alone」

 

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