Robert Johnson(ロバート・ジョンソン)

 

”伝説のブルースマン” ロバート・ジョンソン(Robert  Johnson)

ブルースというジャンルを語るとき、絶対に外せないブルースマンが何人かいる。

ロバート・ジョンソン。言うまでもなく彼はそのうちの代表的な1人である。戦前ブルースにおいて最重要人物であることは間違いないだろう。

27歳という短命ではあったが数々の逸話とともに謎も多く、映像などはなく、残された写真もたった2枚のみであり、音源も29曲で42テイクしかない。

このロバート・ジョンソンについて、僕なんかが何を書けるのかわからないが、まあとにかく『ブルース』や『ルーツミュージック』を語る上でも避けることはできないのである。

数々のブルースマンだけでなく、エリック・クラプトンやローリング・ストーンズを筆頭に世界中のビッグなミュージシャンたちからもリスペクトされている、まさに”伝説”と呼ぶにふさわしい。

何が凄いのか?何が魅力的なのか?

それは、少し無責任な言い方になるが、なぜだか不思議と中毒性のあるロバート・ジョンソンの遺された音を聴くとだんだんとわかってくるような気がする。

 

クロスロード伝説とアイク・ジマーマン

ロバート・ジョンソンというと、やっぱりこの話が最も有名ではないだろうか。

「十字路で悪魔に魂を売り渡して、その引き換えにテクニックを身につけた」

10代の頃、ロバート・ジョンソンは、ミシシッピ・デルタのジューク・ジョイントでブルースを演奏するサン・ハウスやウィリー・ブラウンを目の当たりにして衝撃を受ける。

ロバートは、ブルースとギターの虜になり、何度もサン・ハウスたちの演奏を観に来ては、休憩中にギターを拝借して弾いてみたが、これがかなりひどくて「オマエにはギターは弾けないよ。」ダメ出しをされた。

それから2年くらいロバートは姿を消していたが、また戻ってきて「ギターを弾かせて欲しい」と言って弾き始めると・・・

まったくとんでもない演奏を始めたのである。

ギターのテクニックは全く見違えるほどに上手くなり、さらにファルセット(裏声)を効かせた抜群の歌声を披露し、ラグタイムやカントリー、ジャズなどの要素を交えたとんでもないブルースマンに変わっていた。

このわずか2年ほどの間に全く別人に変わっていたロバート・ジョンソンの出来事を、”クロスロードで魂を悪魔に売ったのと引き換えに手に入れたという伝説”として今も語り継がれているのである。

こちらの写真は実際の場所とは違うのだろうが、おそらく1930年頃はこんな感じだったのであろう。

そして今ではこのクロスロードの場所というのが、ミシシッピ州クラークスデイルにあって、国道の61号線と49号線が交わる交差点という伝説になっていて、現在ではギターのモニュメントが建てられている。

今も世界中のブルースファンがここを訪れるため、ブルースの聖地として存在している。少しビジネスライクな臭いがしないこともないが、ぜひとも足を運んでみたい所ではある。

それにしてもアメリカ人はこういった”伝説”的な話やネタを作るのが本当に上手いなと思う。なんというか夢じみたようなことでも大マジメに語り続けることで、リアルな話のようにしてしまう。それがビジネス目的であってもだ。

経済大国であることには間違いないが、観光産業としても本当に魅力的なコンテンツが多いのは、やっぱり国民性としてのそういった創造力があるからかもしれない。

 

★アイク・ジマーマン

とまあ一般的に語られるクロスロード伝説を書いてみたが、実際にロバート・ジョンソンがギターの師匠としてはアイク・ジマーマン(Ike Zimmerman)なる人物が存在していたらしい。

彼についても伝説的な話がまとわりつくのだが、今のところは音源がなく、おそらく町のギター講師で相当なテクニシャンだったというのが有力である。


(出典:ウィキペディア

ロバート・ジョンソンが再びサン・ハウスやウィリー・ブラウンの元に戻って来た時には、アイク・ジマーマン仕込みの凄いテクニックが披露され、結局はそれが”悪魔に魂を売った”といったクロスロード伝説へとなっていくといった筋書きである。

ではなぜアイクの音源がないのか?

これにもいろんな説があるが、アイクには家族がいて、他のブルースマンのようにジュークジョイントを放浪しながら都会に出てレコーディングしたり出来なかったんじゃないかとか、スタイルが先生なので自らミュージシャンとして商売したくなかったんではないかとか、まあハッキリはしていない。

ただ、その存在が事実だったということは認められているようであるし、ロバート・ジョンソンの楽曲のいくつかは彼が関わっているということだ。

 

技術レベル・ソングライティング能力の高さ

ロバート・ジョンソンが出てくる1936年より前、もちろん音楽的にもテクニック的にも凄いブルースマンたちはたくさんいた。ブラインド・レモン・ジェファーソンやロニー・ジョンソン、ブラインド・ブレイクなんかはその筆頭だろう。

確かに彼らのテクニックは凄い。ギターに関してはかなり変態的なプレイをしているし、今の時代でも十分に通用する。

しかし、ロバート・ジョンソンの音源を聴くと、彼らよりさらに上を行っているのがわかる。もちろんそれは伝説上はクロスロードで悪魔と取引きしたからではあるが・・・

では一体何が上を行っているのか?

それは、いろいろあるのだけど特筆すべきは楽曲の完成度と、プレイスタイルにおけるギターとヴォーカルのバランスである。

これは僕個人の意見だけではなく、数々のミュージシャンやフリークたちが言っていることだけど、ロバート・ジョンソンが遺した29曲のクオリティが高いことからもわかる。ちょっと言い過ぎかもしれないが、ほとんど捨て曲やムダなプレイがないのである。

基本はデルタ・ブルースではあるが、先程の3人の影響を見事に吸収して消化し、ギターのリズムパートとメロディパートを絶妙に融合させている。

ギターを弾いているとわかるが、このリズムとメロディを同時に弾くのは難しく、特にロバート・ジョンソンの場合はそれぞれが独立しているようなパターンで弾いていて、後にローリング・ストーンズのキース・リチャーズが最初に聴いた時に1人で弾いているのが信じられなかったと言っているほどである。

さらに、そのギターにファルセットを効かせたヴォーカルを乗せているのだが、あまり語られないが、ロバート・ジョンソンは本当に歌が上手いというのもまた凄いところである。

先程伝えたアイク・ジマーマンにはスキルやテクニックを学び、他のジャンルを超えたミュージシャンたちからは創造力をインスパイアされ、それらをミックスさせて市場に音源を残した、というところがロバート・ジョンソンの凄さであるとも言えるだろう。

 

後世に与えた影響力

それから後世への影響力というところで特筆すべきは、技術的な部分だけではなく、シャッフルのリズムでブギーを広めたことである。

名曲「Sweet Home Chicago」に代表される♪ジャッジャ ジャッジャ ジャッジャ ジャッジャ ♪と刻むシャッフルのリズムは、”シャッフル・リフ”と名付けられ、その後シカゴ・ブルースの1つの形になり、また同時にチャック・ベリーが得意とするロックンロールの典型を生み出したのである。

そして今や世界中でこのシャッフル・リフは聞くことができ、1つのギターリフのスタイルとして定着している。

それから確かにロバート・ジョンソンの曲はシャッフルが多く、ギターのリズムがしっかりしているので、1人でやっているのに、バンドっぽいというか、なんとも言えないグルーブ感があるのもまた凄いところである。

つまり、他の戦前ブルースマンたちと比べると、ロバート・ジョンソンの楽曲はかなりロックやロックンロールなどのバンド形態に近い音になっており、いい意味でわかりやすく、後のミュージシャンたちが影響を受けやすかったのだ。

アコースティックな戦前ブルースと戦後のバンド系の音との橋渡しをした歴史的な偉業とも言えるかもしれない。

 

27クラブ

これもまた謎を呼ぶというか都市伝説というべきか、ロバート・ジョンソンを伝説たらしめている話なワケではあるが、『27クラブ』の会員だということである。

『27クラブ』とは、27歳で死亡したアーティストや俳優のリストである。

ただ27クラブというものが、そもそも後付けであって、1994年のニルヴァーナのカート・コバーンが死去した後に作られたまあ言わば無理やり作られたような名簿リストなので、これを伝説というべきかは少々疑問ではある。

しかし言えることは、確かに27クラブのメンツを見ると確かに凄い顔ぶれであることは事実なのである。

有名どころでは、ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリスン、エイミー・ワインハウスなどがいるし、ここに先述のカート・コバーン、そしてロバート・ジョンソンが入るのだ。もちろん他にもたくさんのアーティストたちが27歳で命を落としている。

これを偶然とするべきか?

または逆説的に破天荒な人生を送り、ドラッグ漬けで身を削っていたからこそ、若い頃から優れたパフォーマンスを出すことができ、天才的な活躍をしながらも命を落としてしまったのか?

原因は僕にはわからないが、それらが重なってしまった結果なのかもしれない。

ロバート・ジョンソンは毒殺されたと言われているが、それにしても27歳は早すぎる死だった。たまたま27歳で亡くなっているが、殺されてなければ何歳まで生きていたのだろうか?

今とはまた音楽界の状況が変わっていたかもしれないし、あまりいい表現ではないが、早死にしたからこそこれだけの伝説となったのかもしれない。

どちらにしても、事実としてロバート・ジョンソンという1人のブルースマンが存在し、圧倒的なパフォーマンスで後の音楽界の歴史の一片を創ったというのは紛れもないことなのである。

 

曲紹介

ここからは曲紹介に入りたいと思うが、ロバート・ジョンソンが遺した29曲は基本的にどの曲も素晴らしく、重要な曲ばかりである。

ただ、全てをここで紹介すると少し多すぎるので、まずは外してはいけない代表曲を中心にランキングで紹介したいと思う。

※それからロバート・ジョンソンはスコアの方が全体的にかなり高めになってしまうので、少し厳し目に付けてバランスを取ってみた。

後半では残りの曲を紹介しよう。

ちなみにエリック・クラプトンはほとんどの曲をカヴァーしている。本当に大好きなんだなぁ・・・

代表曲ランキング

20位:Stones in My Passway(1937年)

まずはこの曲。テキサスのダラスで録音されたなんとも埃っぽいブルース。リズム感が凄くて感動ものである。少し跳ねたギターを弾きながらよくこんな歌を乗せられるなと感心させられる。ロバートの曲にはよくあるが、途中のブレイクに入ってくるスライド・ギターやいきなりリズムが変わったり、まさに天才的な側面が出ている曲。

しかし選曲が本当に悩ましい・・・。個人的な好みもあるのでなかなか選定基準が難しいところだ。

重要度 3.0
知名度 3.0
ルーツ度 3.5
好み 3.0
総合 3.0

 

 

19位:I Believe I’ll Dust My Broom(1936年)

この曲はロバート・ジョンソンにとって2曲目にレコーディングしたもの。エルモア・ジェイムスがスライド・ギターでシカゴブルース調で「ダスト・マイ・ブルーム」としてカヴァーして有名になった曲で、このスライド・プレイは後のブルースのスタンダード・パターンとなり、エルモアの代名詞にもなっている。

本家の方はギターフレーズはスライドは使っていないが、まさにこれぞロバート節のシャッフル・ブギが炸裂していて、後の「スイート・ホーム・シカゴ」につながる重要な曲だ。

重要度 4.5
知名度 3.0
ルーツ度 3.0
好み 3.0
総合 3.5

 

 

18位:From Four Untill Late(1937年)

ロバート・ジョンソンの曲の中では少し異彩を放っている曲。リリースが1937年なので、おそらくブラインド・ブレイクの「Georgia Bound」やスキップ・ジェイムスの「Four O’clock Blues」の影響を受けているのだろうが、イーストコーストなテイストが入っていて、またこれも魅力の1つだろう。

動画は投稿者が速度調整しているようで、通常バージョンより遅めだが、確かにこっちの方がしっくりくる。

また、クラプトンはこの曲をクリームでやっているが、少しカントリーっぽい仕上がりになっていて、それはそれでなかなかいい。

重要度 3.0
知名度 3.5
ルーツ度 3.5
好み 3.5
総合 3.5

 

 

17位:If I Had Possession Over Judgement Day(1936年)

この曲ももちろんロバートの代表曲ではあるけど、ほぼ僕の好みで選んだ。

しかしカッコいい。ギター1本の弾き語りで、スライドさせながらこの歌い方されると戦前ブルース好きにはたまらない。相変わらず独特のリズム感で疾走するようなギターは本当センスの塊である。このへんから影響受けているギタリストやミュージシャンも多いんだろうな。

こんな曲をサラッとやってみたいものだ。

重要度 3.0
知名度 3.0
ルーツ度 4.0
好み 4.0
総合 3.5

 

 

16位:Hellhound On My Trail(1937年)

評論家などから高い評価を受けている曲。”Hell Hound”は”罪人を捕まえる地獄の猟犬”の意味で、ブルースではよく出てくるキーワードの1つでもある。地獄の猟犬がつきまとうといったような意味で、”死”をほのめかしていて、曲全体が重く暗い感じで流れていくのもこの曲の特徴だ。

また、後半に出てくる歌詞で、”the leaves tremblin’ on the tree”という箇所は、ロバートが自然を描写していてとても珍しい。

この動画も速度調整されていて、通常バージョンよりもなんかしっくりくる。

重要度 4.0
知名度 3.5
ルーツ度 3.5
好み 3.0
総合 3.5

 

 

15位:Dead Shrimp Blues(1936年)

「朝起きたら俺のエビが皆死んでいた・・・」??なんのこっちゃと思うが、これはおそらくブルースによくあるセクシャルな比喩のことだろう。まあ元々ブルースってそういった男女間のことをよく歌っているので、内容については想像にお任せしよう。

なんとこの曲日本のテレビドラマでかかったことがあるのをご存知だろうか?

20年ほど前に永瀬正敏主演の「私立探偵 濱マイク」というセンス抜群の素晴らしいテレビドラマがあったのだが、その中で永瀬が木村充揮と共演するシーンのバックでずっとこの”Dead Shrimp Blues”が流れているのだ。さすがであるが、後にも先にも二度とこんなことはないだろう。

重要度 3.0
知名度 3.5
ルーツ度 3.0
好み 3.5
総合 3.5

 

 

14位:I’m A Steady Rollin’ Man(1937年)

このへんからロバート・ジョンソンの代表的な曲がどんどん出てくるが、ロバートの曲は本当にいっぱいカヴァーされてて、ブルースだけでなくロックっぽいのもあるし、それらと比べながら聴いたりするのも面白い。それにしてもプロ・アマ問わず本当にたくさんのミュージシャンに影響を与えているのに驚く。

この曲もギターのベース音が一定で、そこに淡々と乗ってくるギターとヴォーカルのパターンだが、聴けば聴くほどに引きずり込まれるような魅力があることがわかってくるから不思議だ。

「オレはいつも転がりまわってるんだ」ってよく意味がわからんけど、、、

重要度 3.0
知名度 3.5
ルーツ度 3.0
好み 3.5
総合 3.5

 

 

13位:Terraplane Blues (1936年)

この曲は20位で紹介した「Stones in My Passway」とギタープレイが似ているので、曲だけ聴いていてもあまり違いがわからない。特に英語のリスニング力に乏しい僕たちネイティブの日本人には同じ曲に聞こえるだろう。ただ、リリースはこっちの方が早く、ロバートの曲の中では最もヒットしたようだ。

テラプレーンとは車の名前だが、歌詞の内容はこれまた得意の暗喩で車のボディを女性にたとえているようだ。この頃20代だし、ロバート・ジョンソンもかなり性欲があったのかもしれないなあ。

まあ、だいたいブルースってそういうセクシャルな歌詞が多いけど、英語を聴いて理解できたら本当に面白いだろうなと思う。だから売れたんだろうけど。

重要度 3.5
知名度 4.0
ルーツ度 3.5
好み 3.0
総合 3.5

 

 

12位:Rambling On My Mind(1936年)

先述したアイク・ジマーマンが作ったと言われている曲。

ギターはオープンチューニングで、スライドギターから入るイントロの次にシャッフルブギのリフが入ってきて一気にノリのあるブルースへと流れていく。後のシカゴブルースの基本の形を作った一曲でもある。

サウンドに丸みがあってなぜか古臭さを感じないのはどうしてだろう?音処理の技術レベルの凄さでもあるのだとは思うけど、最近録ったと言われても違和感がないと僕には聞こえる。

エリック・クラプトンも好きでよくカヴァーしているし、そのクラプトンバージョンをまた多くカヴァーされている人気の曲でもある。

重要度 4.0
知名度 3.5
ルーツ度 3.5
好み 3.5
総合 3.5

 

 

11位:Me and the Devil Blues(1937年)

ロバート・ジョンソンの象徴ともいうべき”悪魔”というキーワードがタイトルとなっている曲。

動画は有名なアニメーションで、シュールで空想的なストーリーになっていておもしろい。朝起きたら悪魔がやってきて悪いことをそそのかすといった内容で、ロバートと悪魔との切っても切れない関係を歌っているし、やっぱり自分の世界を創り上げているところが凄くて、歌詞の才能も感じさせる。

ちなみに日本では平本アキラという漫画家が、なんと”俺と悪魔のブルーズ”というタイトルで作品を出している。→ こちら
僕はまだ試し読みしかしていないが、ぜひとも読んでみたいものだ。

重要度 4.0
知名度 4.0
ルーツ度 3.5
好み 3.0
総合 3.5

 

 

10位:32 – 20 Blues(1936年)

32-20というのはライフルの弾薬のことを表している。原曲はスキップ・ジェイムズの「20-20 Blues」で、好きな女性のことを少々殺気じみるぐらいに狂おしく歌い上げている。

この曲はギターを弾く人だとわかると思うが、ロバート・ジョンソンにしてはコピーしやすくわかりやすい曲。カヴァーも多いし、そんなに難しくないのでとっかかりやすい。もちろん歌いながら弾くというのであればかなりハイレベルな曲になってしまうが、ギターだけだとそんなに難しくない。リズムがいい感じで弾いててもノれる曲なので好きだ。

重要度 3.5
知名度 3.5
ルーツ度 3.5
好み 4.0
総合 3.5

 

 

9位:Stop Breakin’ Down Blues(1937年)

おそらくこの動画のバージョンも少し再生の回転数が速い。ロバート・ジョンソンの声が高く、疾走感があるのだが、でも僕は結構このバージョンが好きだ。

少しテンポが速いことも関係あるだろうが、なんとも言えない緊張感がある。

歌の内容もなかなか攻撃的な卑猥だ。「脳ミソ爆発させて」とか「ピストルを突きつける」とか、アグレッシブなフレーズが多い。

そしてこの曲もまたたくさんのブルースマンやミュージシャンにカヴァーされているのである。中でも、ジャック・ホワイト率いるホワイト・ストライプスのバーションは個人的にとても気に入っている。

重要度 4.0
知名度 4.0
ルーツ度 3.5
好み 4.0
総合 4.0

 

 

8位:Preachin’ Blues(1937年)

これはもうギターがとにかくカッコいいので、個人的な好みでランキングも上位に入れた。

イントロから急にリズムが変わってスライド・ギターとパーカッシブなピッキングが絶妙のリフとなってこの曲の土台を作っている。

しかしなんてカッコいいリフだろう。よくこんなのを思いつくなとまたまた感心させられる。

そしてこのパーカッシブな伴奏だが、速度を落としてよく聴いてみると、実はファンク・ギターに近いものだということがわかる。つまり、この頃にファンクのベースとなるカッティング系のギターを、ロバート・ジョンソンが編み出していたことになる。うーむ、これは我ながら凄い発見だ。

タイトルが「説教ブルース」だけど、歌詞の内容はあまりそんな感じでもないのはなぜだろうか?なんだか日本人にはよくわからない。また、サン・ハウスも同名の曲をやっているが、アレンジなんかは全然違う。

動画はあのケブ・モがロバートになりきって演じているようだが、さすがである。実際にもこんな感じだったのかといろんな想像が出来ておもしろい。

重要度 4.5
知名度 3.5
ルーツ度 4.0
好み 4.5
総合 4.0

 

 

7位:They’re Red Hot(1936年)

ロバート・ジョンソンの中ではラグタイム調の異質な曲だが、とても人気が高い。カヴァーも多く、一般的に有名なのはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのバージョンだろう。実際僕も学生の頃それを先に聴いたし、多くの人がそうなのではないかと勝手に思っている。

曲のコード進行も変わっていて、インパクトがあるのに何回聴いても引き込まれる魅力があって凄い。ラグタイムっぽいので、少しジャジーな音も使っているからかもしれない。

また、他の曲と比べると声が違うのがわかる。明らかに少しだみ声っぽく歌って曲のカラーも変えているが、この辺にも天才的なセンスを感じさせる。

歌に出てくるのは、メキシコのタマーレという辛いソースをかける食べ物だそうだが、やっぱりこれも卑猥な例えとして使われているよう。

重要度 4.5
知名度 4.0
ルーツ度 4.0
好み 4.5
総合 4.0

 

 

6位:Come On In My Kitchen(1936年)

これもロバート・ジョンソンの代表曲で、音楽歴史家や評論家の評価も高い。

曲自体はロバート以前に活躍した多くのブルースマンからヒントを得たり、パクっている?という説もあって、賛否両論がある。僕としては「SittingonTop of the World」のイメージが強いが・・・。しかし、このロバートが最終的に打ち出した曲は確かにオリジナルである。そしてこの曲もまたカヴァーが多い。

ヴォーカルのラインとスライドギターがユニゾンで展開され、つぶやくようなロバートの歌声と絶妙に絡み合っていて、まさに独特の世界観を創っているところがやはり凄くて、多くのミュージシャンたちが影響を受けているのがわかる。

重要度 4.5
知名度 4.0
ルーツ度 4.5
好み 4.0
総合 4.0

 

 

5位:Kind Hearted Woman(1936年)

1990年に発売されたロバート・ジョンソンの完全録音集というべき一世を風靡した?『The Complete Recordings』の冒頭1曲目に収められた曲なので、ロバート・ジョンソンといえばまずこの曲が出てくる人も多いかもしれない。

エリック・クラプトンを筆頭とした数々のブルースマンやレジェンドたちが絶賛していたため、このアルバムを購入した人もいるだろう。

ただ、今までカントリー・ブルースをよく知らなかった人間が1曲目のこの曲を聴いた感想が、だいたい「よくわからない」「イマイチ良さがわからない」といったものだった。僕も漏れずに同じことを思った。

しかしあれから数十年が経ち、改めて聴き直すと、、、やっぱりロバジョンは凄い!となってしまうから不思議である。この「Kind Hearted Woman」も僕にとってはそんな曲と言える。

重要度 4.5
知名度 4.0
ルーツ度 4.5
好み 4.0
総合 4.0

 

 

4位:Walking Blues(1936年)

後のモダン・ブルースやブルース・ロックを彷彿させるとてもパワーのある凄い曲だ。これはロバート・ジョンソンが1人でやってるんだけど、まるでバンド・サウンドのようなパフォーマンスである。だからバンド編成でのカヴァーもかなり多い。

しかしこれはカッコいい。弾き語りなのに疾走感があって、大地を刻んで歩いていくようなリズムと音の厚みがある。

ロバートのヴォーカルも迫力があっていい声だ。同名の曲がサン・ハウスにもあるが、このロバートの「Walkin’ Blues」はどちらかというと「My Black Mama」の方が影響が強く感じられる。

このロバート・ジョンソンの「Walkin’ Blues」が1936年のリリースだが、実はそれ以前にサン・ハウスを含めて同名の曲が11曲もブルースマンたちによって出されているのもおもしろい。まあ、それくらいブルース界隈においてはスタンダードなタイトルなのだろう。

また、ロバート・ジョンソンの後にマディ・ウォーターズも「Walkin’ Blues」をやっていて、独特のギターが彼らしくてこれも良い。

”ブルースが靴を履いて歩いている?”ようなコミカルな絵を想像して聴くのがいいかも。

重要度 4.5
知名度 4.0
ルーツ度 4.0
好み 4.5
総合 4.0

 

 

3位:Love in Vain(1937年)

ここからのトップ3はどれも名曲すぎて甲乙つけがたいが、とりあえず世間の認知度あたりを基準に紹介したい。

「Love in Vain」。ローリング・ストーンズやエリック・クラプトンがカヴァーしたことで一気にロバート・ジョンソンが有名になった曲である。世界中でたくさんのカヴァーがあるが、曲のテンポが遅いのでロバートのギターをコピーするのにももってこいの練習曲でもある。

歌の内容は失恋だが、少し女々しさがあって暗く多く共感を得ているようだ。ローリング・ストーンズのようにフォークバラードっぽくやると、余計に悲しさが募ってくる。この曲を聴くと太く短く生きたロバート・ジョンソンの「生」への儚さみたいなものが感じられてくるのは僕だけだろうか。

重要度 4.5
知名度 4.5
ルーツ度 4.5
好み 4.0
総合 4.5

 

 

2位:Sweet Home Chicago(1936年)

もはや説明するまでもない名曲中の名曲。もしかしたら、ブルースというジャンルの中においては最も有名な曲かもしれない

では「なぜこの曲が2位なのか?」と思われるかもしれないが、まあそこはロバート・ジョンソンというブルースマンのカテゴリの中で見た場合には2位が妥当なのではないかと個人的に思ったからである。

あまりにも有名で凄い曲になっている「Sweet Home Chicago」だが、実際のところはロバートのバージョンというよりは、マジック・サムを筆頭とするシカゴ・ブルーススタイルやクラプトンやローリング・ストーンズなどのブルースロック・バンドから世界的に広がり、定番化していったという流れがある。

確かにそれらのバージョンは典型的な3コードの12小節ブルースだし、歌や楽器のソロ回しなども含めてとてもセッションしやすくわかりやすい曲というのも人気のある理由の1つだろう。

これは勝手な想像だが、ロバート本人の意向どころか、その原曲のポテンシャルはあるにせよ、曲の方が独り歩きしてしまった感が否めないのも事実ではある。

つまり、”ブルースを聴くならまずは「Sweet Home Chicago」を聴け”とか”「Sweet Home Chicago」を聴かずしてブルースを語るな”みたいな定番化の風潮が世の中で作り出されてしまったために、”ブルースといえ「Sweet Home Chicago」”という図式が出来てしまったという背景がある。

だからブルースというジャンルを通る時に、初心者なら誰でもこの「Sweet Home Chicago」を聴くというスタイルが出来上がってしまっているのだ。

これも有名な話だが、2012年にはホワイトハウスでブルースの祭典が催され、B・Bキングやバディ・ガイ、ミック・ジャガーやジェフ・ベックなどが参加した「Sweet Home Chicago」の大セッションで、あのバラク・オバマ大統領が一節を歌うという、今までの歴史では考えられないような出来事があった。

まあ要するに、それほどの曲だということである。

この曲に関しての逸話やストーリー、まつわる出来事を上げればきりがないのでこれで終わりにしようと思うが、他のシカゴブルース以降のミュージシャンの記事の中でもまた書いていくことにしたい。

以下にスコアを付けてみたが、すべての曲の中でも最高点かもしれない。

重要度 5.0
知名度 5.0
ルーツ度 5.0
好み 4.5
総合 5.0

 

 

1位:Cross Road Blues(1936年)

1位はやっぱりこの曲しかないだろう。ロバート・ジョンソンと言えばクロスロードだし、悪魔に魂を売って伝説になったのも、ミシシッピ州のクラークスデイルに”ブルースの聖地”となっているのもクロスロードだからである。

曲どうこうよりも、その「Cross Road」というキーワードが大きくなりすぎた感はあるが、確かに『ブルース』というジャンルを語る上で絶対に外せないものとなった。

この曲においても僕がいろいろ解説するまでもなく、世界中のサイトや書籍、映画やドキュメンタリーなど数えきれないほどに情報が溢れているので、詳しく知りたい方はそれらを参考にしてみて欲しい。

そんな絶対的なタイトル曲であるがゆえに、ランキングで1位にするしかないというのが正直なところではある。

いろんなカヴァーもあるし、もはや原曲をほとんど留めていないようなロックバージョンもたくさん存在しており、この曲もブルースにおいてはマストとなっていると言えよう。

上で紹介したYouTubeの動画は2021年11月時点でPV数が2600万回を超えているが、おそらくブルースの中では最高回数ではないだろうか?まあ、この曲もそれくらいの凄い曲だということである。

重要度 5.0
知名度 5.0
ルーツ度 5.0
好み 4.0
総合 5.0

 

 

 


ロバート・ジョンソン。

さすがに最高級のレジェンドである。あまりにもボリュームが大きすぎて、まだまだ全然書き足りないというのが正直な感想だ。彼だけでもサイトが1つ作れるくらいだろう。ルーツミュージックではもちろん、間違いなく音楽界全体においても超重要な人物である。

何度もお伝えしているが、ポピュラー・ミュージック界におけるこちらも超大御所のエリック・クラプトンやローリング・ストーンズというスーパースターを筆頭にあまりにもリスペクトしているミュージシャンやアーティストなどが多く、そんな彼らが口を揃えて「ロバート・ジョンソンがいなかったら自分たちも存在していない。」と言うほどなのだ。

後のブルースやR&Rはもちろん、ロック全般においてもロバートの影響がそこかしこに見られる。

いかにロバート・ジョンソンが偉大かということが伝わるだろうか。もちろんこのサイトにおいても最重要な1人であることは言うまでもない。

 

 

その他の曲

上記ランキングには入れていないがここで紹介する曲ももちろん素晴らしいので、ぜひ聴いてみていただきたい。

・When You Got a Good Friend(1936年)

・Phonograph Blues(1936年)

・Last Fair Deal Gone Down(1936年)

・Little Queen of Spades(1937年)

・Malted Milk(1937年)

・Drunken Hearted Man(1937年)

・Travelling Riverside Blues(1937年)

・Honeymoon Blues(1937年)

・Milkcow’s Calf Blues(1937年)

 

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